編曲/楽譜浄書/出版譜
Arrangement / Music score
楽譜を書くようになった理由
1996年頃だったでしょうか。大学2年生の頃の話。
まだパソコンが一家に一台ではなかった時代。
友人から「パソコンがあれば売り物と同じ楽譜が書ける」「Finaleという楽譜を書くソフトがあるらしい」という情報を入手ました。
以前より写譜ペンを購入し、手をインクまみれにしながら紛失した室内楽のスコアを作ったり、頼まれてもいないのに母校の校歌のパート譜を浄書するなど、むやみに楽譜を書くことが好きだったのでパソコンで売り物と同じ楽譜が作れるなんて、まさに僕が欲しかったもの、そのものでした。
これは絶対手に入れたい!
しかし当時のパソコンは今とは比べ物にならない高価なもので、調べてみるとどうやらFinaleというソフトもかなり高額。
学生の自分には到底手が届かないものでした。
が、ここで引き下がれずに恥ずかしながら親におねだりして買ってもらいました。
こうしてMacintoshのパソコンやらモニタやらレーザープリンタやら、それぞれがとても高価なおもちゃを買い揃えてもらい、使い方もよくわからず音符を入力して遊んでいました。
ひどい話ですが、別に楽譜を書く仕事も具体的な目的もありません。ただの興味です(最悪)。
しかし遊び続けていくうちに、だんだんとFinaleを使えるようになり、そうなると次は何かちゃんと使える楽譜を作りたいと思うようになるのが必然。
そこで手始めに金管5重奏(トランペット2、ホルン、トロンボーン、テューバ)の編曲をやってみました。
この編成であれば、作った楽譜を音大の仲間にお願いしてすぐ音出しができるわけです。
ちょうどこの頃、NHKの大河ドラマでは「秀吉」が放送されていました。このテーマ曲はピッコロトランペットがソロパートを務め、しかもその演奏は師匠の津堅直弘氏。これがめちゃくちゃカッコイイ。
これだ!これを編曲して自分でも吹きたい!
しかし、考えてみればトランペット以外の楽器事情が全然わかりません。金管5重奏の効果的な書き方って?いや、それより音域は?
見切り発車甚だしい。
パソコンの優秀なところは、どんなに演奏させてもバテないことです。あと、音域がどんなに高くてもちゃんと吹いてくれる。ブレスをしないで何拍でも音を出し続けられる。もはや無敵。
こうして休符が全然なく、なぜかみんなが異常に音域の高い金管5重奏「秀吉」が完成したわけです(「あかんやつや」という声が聞こえる)。
早速友人にお願いして音出しをしてみると、当然の結果になりました。
「音高い!」
「キツい!」
「休めない!」
「ここ吹けない!」
全然イメージした音にならない。
パソコンで再生したように全然ならない。
みんなもっと頑張れよ(そうじゃない)。
それと、パソコンで作ったのになんかすごい読みにくい。
売り物と同じ楽譜が作れるんじゃなかったっけ?おかしいなあ。
「秀吉」はもういいや。次行こう。どんどん書いてみよう。
そしてどんどん書いてどんどんダメ出しされて、どんどん見えてくる。
そんな中、師匠である「秀吉(津堅直弘先生)」にFinaleで作った楽譜(秀吉の楽譜ではない)を見ていただいたところ、とても興味を示していただきました。というのも、師匠は以前より「マルセル・ケンツビッチ」の名前で作曲をされていたのです。そういったことから、光栄にも師匠の作品の浄書をまかせていただけるようになりました。
独奏曲から室内楽曲、吹奏楽やオーケストラまで、その様々な規模のスコアを浄書し、パート譜も作る。
この経験がとても大きなスキルアップに繋がりました。
このように単なる興味で始めた編曲と楽譜浄書で、かなり遠回りはしましたが、気づけば出版譜のデータ提供や音大への編曲提供までさせていただけるようになりました。どうやらフランスの出版社からも出ているようです。
これもすべて師匠である秀吉(津堅先生)のおかげです。感謝。
編曲・浄書の主な経歴
1996年
楽譜浄書ソフトfInaleを手に入れ、何の知識もないまま編曲を始める
1997年
東京音大トランペット専攻生学外公演で、自編曲を初めて人前で披露する
※学生の間は「演奏したい楽譜がなければ書けば良い」精神で次々とダサい編曲を作り上げ、周囲に迷惑をかけながら経験を積む。
1999年頃~
師匠である津堅直弘先生(マルセル・ケンツビッチ)の作曲された全作品の浄書を担当
2004年
山田耕筰作曲「舞踏詩『野人創造』」の楽譜浄書を担当
2011年
クローバーアートミュージック楽譜提供開始(現在BASEにて再販中)
2012年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「ローマの祭/レスピーギ」の編曲を提供
2013年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「ハンガリー狂詩曲第2番/リスト」の編曲を提供
2014年
ゆめりあホールワンコインコンサート出演時の「カルメン(抜粋)/ビゼー」「動物の謝肉祭/サン=サーンス」の編曲(Sax,Trp,Trb,Pf)を手がける。1つの公演において全作品自編曲は初
2014年
東京音大シンフォニックウインドアンサンブル定期公演へ「ローマの祭/レスピーギ」の編曲を提供
2015年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「交響曲第5番/ショスタコーヴィチ」の編曲を提供
2017年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「交響曲第5番/チャイコフスキー」の編曲を提供
2017年
東京音大シンフォニックウインドアンサンブルへ「ガイーヌ組曲/ハチャトゥリアン」の編曲を提供
2018年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「ローマの松/レスピーギ」の編曲を提供
2019年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「弦楽四重奏曲第1番より第2楽章”アンダンテ・カンタービレ”/チャイコフスキー」のトランペット大編成編曲を提供
2024年
東京音大トランペットアンサンブル演奏会へ「交響曲第2番 より 第4楽章/ラフマニノフ」のトランペット大編成編曲を提供
この他にも、自分が出演するコンサートや指導先の部活、依頼編曲を多数手がける。
クローバーアートミュージックより出版されていた楽譜の一部
トランペットアンサンブル版
交響詩「ローマの祭」/O.レスピーギ
2012年、東京音大トランペットアンサンブルの依頼で編曲しました。
僕が学生の頃からずっと続いている東京音大のトランペット専攻生全員が出演する学外公演では、プログラム後半でトランペットと少数の中低音金管楽器だけで管弦楽曲を演奏する毎年注目される企画があります。
この編成で市販の楽譜は存在しませんから、以前より他の音大からお借りしたり、自分たちで編曲をするなどの手段をとっていました。
この「ローマの祭」は僕が初めて東京音大トランペットアンサンブルへ提供した編曲作品です。
吹奏楽版
交響詩「ローマの祭」/O.レスピーギ
毎年夏に開催する東京音楽大学シンンフォニックウインドアンサンブル定期演奏会のメインプログラムとして演奏されました。
「ローマの祭」をはじめとしたレスピーギの「ローマ三部作」は、すでに多くの編曲作品が販売していますが、僕の編曲作品の特徴はとにかく編成(パート数)が大きいこと。というのも、東京音大の吹奏楽は管打楽器の3,4年生全員(クラリネットは1,2年生も全員)からならる100名を超える巨大編成なので、ユニゾンばかりにならないよう、場面によってはかなり多くの音を書いてあります。
また、既存の楽譜は一般的にヴァイオリンパート=クラリネットなど単純に割り振られていることが多いのですが、まったく違う複数の楽器にユニゾンで吹いてもらうなどの響きの複雑さと重厚さも意識して編曲しました。
2014年編曲。
トランペットアンサンブル版
交響曲第5番 第4楽章/P.チャイコフスキー
2017年編曲。こちらも東京音大のトランペットアンサンブルへの提供です。
ローマの祭にはじまり、ここまで3つの作品を提供して一番感じたことが、「どんなに難しく書いても東京音大トランペット科の学生はさらりと吹いてしまう」という点。
僕が学生の頃とは比べ物にならない技術力の高さを持っています。
以前は「こんなこと書いたらイヤかな?無理かな?」と思って遠慮していたことも、どれだけ難しく書いても吹かれてしまうので、今回は最初から「もっと難しくしてやる!」と、ただのイヤな先輩になっていたのですが、残念ながら今回も学生の勝ちでした。
編曲作品の販売
編曲作品をお求めいただけます。
以前、クローバーアートミュージックというところから編曲作品を出版販売させていただいておりました。
残念ながら現在はそちらでの販売は終了しておりますが、在庫が若干残っております。
楽譜は使っていただいてこそ意味のあるものですから、ぜひ僕の編曲作品をみなさまに演奏していただきたいと思い、BASEというサービスにて再販することに致しました。
ぜひご覧ください。
[金管4重奏(フレキシブル編成)]
J.S.バッハ/メヌエット BWV Anh.114
J.S.バッハ/メヌエット BWV Anh.115
J.S.バッハ/行進曲 BWV Anh.122
J.S.バッハ/行進曲 BWV Anh.124
J.S.バッハ/ミュゼット BWV Anh.126
R.シューマン/「子どものためのアルバム」より 作品68
[金管5重奏]
M-A.シャルパンティエ/「テ・デウム」より 前奏曲
G.ヴェルディ/歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」
E.サティ/ジュ・トゥ・ヴ(おまえがほしい)
G.マイヤベーア/歌劇「予言者」より「戴冠行進曲」
[金管8重奏]
G.ヴェルディ/歌劇「アイーダ」より 凱旋行進曲
W.A.モーツアルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
C.フランク/天使の糧
C.サン=サーンス/フランス軍隊行進曲(「アルジェリア組曲」より)
W.A.モーツアルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス
G.ビゼー/小組曲《子どもの遊び》
No.1 行進曲(ラッパと太鼓)
No.2 子守歌(お人形)
No.3 即興曲(こま)
No.4 二重奏(小さな旦那様、小さな奥様)
No.5 ギャロップ(舞踏会)
※こちらの商品はセット販売、曲ごとの販売の両方がございます。
セット販売はおよそ1冊分(2,000円)お得です。